2019年現在M&Aの件数は右肩上がりであり、2018年4月には武田薬品工業がシャイアーを買収した例があります。その売買金額は6兆円にのぼりました。
巨額の資金が動くM&Aですが、ここでは仲介会社に支払う報酬の種類や仕組みを徹底解説します。
1)M&A仲介手数料の概要
M&Aの需要は2011年を皮切りに年々高まっており、いまや大企業のみならず中小企業も事業存続の手段として検討しています。
しかしながらそのプロセスは複雑で成功しない可能性も高く、プロのM&A仲介会社に依頼するのが一般的です。複雑なだけに、「手数料がどのくらいかかるか」というのは一概に言えませんが、各プロセスでかかる手数料がそれぞれどのように算出されるのかを知っておくとイメージが沸きやすいでしょう。
次の項目では、手数料の種類と相場を見てみましょう。
2)仲介手数料の種類と相場

仲介会社へ支払う手数料には以下の7種類があります。
【1】相談料(相場:0~10000円)
実際に依頼をする前に、そもそもM&Aをすべきか?など事前に相談をする際の手数料です。未公表ですが、現在国内には数百社もの仲介会社が存在しており、相談料をとらないことで差別化を図る会社がほとんどです。
【2】着手金(相場:50~200万円)
相談料は無料でも、M&Aの実施が決定したら、委託手数料として着手金が発生します。これはM&Aが成功しなくても返金はありません。
近年では、前述の通り仲介会社間での競争が激化しているため、成功報酬から差し引いたり、なかにはそもそも無料としている会社もあります。振れ幅も大きく、大型案件によっては500万円程度かかるケースもあります。
【3】月額報酬(相場:30~200万円)
リテイナーフィー(定額顧問料金)とも呼ばれ、ひらたく言うとコンサルタントの毎月のお給料です。規模によって費用は全く異なりますが、M&Aの成立までかかるとなると数百万円単位となるため、やはり近年では無料にしている仲介会社もあります。しかしながら、成功報酬に乗せる会社もあるため、トータルの手数料で検討するよう注意が必要な項目です。
【4】調査手数料(相場:0~80万円)
デューデリジェンス費用とも呼ばれ、売り手企業の調査にかかる手数料を指します。相手の財務状況や手続きにかかる税務・法務面など調査の範囲は多岐に渡るため、手数料も数十万円~数百万円かかるケースもあります。
実施必須項目ではありますが、着手金に織り込み済みの仲介会社も多くあります。調査手数料を別に徴収する仲介業者では、調査の範囲を最低限に抑えればコストを下げることも可能です。
【5】中間報酬(相場:成功報酬(後述)の10~20%)
M&Aの「基本合意」が成された時点で、中間報酬が発生します。基本合意とは、買い手を希望する企業が買収の意志を固めた際に結ぶ「仮契約」のことです。
あくまで仮なので、企業調査の結果、売り手企業に問題があった場合は成立に至らない可能性もあります。
中間報酬は成立に関わらず返金はされませんが、成功報酬の一部とみなして成立後に差し引かれるケースが殆どです。いわば成功報酬の「前払い」の位置づけです。
【6】成功報酬(相場:レーマン基準により算出『※3』 成功報酬の算出方法を参照』)
M&Aが成立し、買い手と売り手の「最終合意」が成された時点で発生する手数料です。成立しなかった場合は発生しません。成功報酬の額は、売り手企業の規模や事業内容をもとに「レーマン基準」と呼ばれる計算方法で算出します。
【7】手数料以外のコスト
盲点なのが、手数料以外にもコンサルタントへ支払う金額があるということです。
なかには、コンサルタントの出張費や調査にかかる各種書面の作成・印刷費を請求する仲介会社もあります。着手金や成功報酬に含まれている会社もあるので、相談の時点で確認しておくことが大切です。
3)成功報酬の算出方法

手数料は仲介会社により異なりますが、成功報酬に関しては殆どの会社が「レーマン基準」を採用しています。
【1】レーマン基準の概要と計算方法
レーマン基準では、売り手企業の譲渡金額(後述)に応じた報酬料率を乗じて決定します。
5億円以下の部分 ・・・5%
5億円超~10億円以下の部分・・・4%
10億円超~50億円以下の部分・・・3%
50億円超~100億円以下の部分・・・2%
100億円超・・・・・・1%
【2】譲渡金額の考え方
譲渡金額の考え方には次の3パターンがあります。
(1)譲渡金額・・・・M&Aが成立した際の株価時価総額
(2)移動総資産・・・株価時価総額+負債総額
(3)企業価値・・・・株価時価総額+有利子負債総額
買い手にとって有利なのは (1)の純粋な株価総額をベースとした考え方です。負債を視野に入れないぶん減額できるからです。そのため、仲介会社に相談する際に成功報酬まで視野に入れる必要があります。
【3】最終的な成功報酬の算出
ここまで成功報酬に必要な考え方について述べましたが、実際に計算してみましょう。
譲渡金額×レーマン基準による手数料率=成功報酬です。
取引金額が20億円の場合の手数料の計算方法
例)譲渡金額が20億円の場合
5億×5%+(10億-5億)×4%+(20億-10億)=7,500万円
いかがでしょうか。このようにレーマン基準による報酬を採用する仲介会社では、成功報酬を計算してイメージできます。
4)仲介会社の報酬体系
2011年以降、仲介業者の競争も激化し、着手金を取らずにM&Aが成立してはじめて報酬を取る「完全成功報酬型」を採用する会社も多くなりました。
【1】報酬体系の種類
前述の通り、完全成功報酬型を採用している仲介会社が多くありますが、ここではそれ以外も含めた主な報酬体系を3つご紹介します。
(1)着手金+成功報酬型
(2)完全成功報酬型(中間報酬あり)
(3)完全成功報酬型(中間報酬なし)
このように、まず相談後、仲介会社に業務委託した時点で費用が発生する(1)のケースがあります。また買い手がM&Aに基本合意した時点で中間報酬が必要なケースとそうでないケースによっても分かれます。
では、着手金を無料とする仲介会社も多いなかで、あえて徴収する会社があるのはなぜでしょうか。次に着手金の意義や問題点に触れていきます。
【2】安い報酬体系=良い仲介会社か?
着手金とは、そもそも買い手企業を探して調査するための費用です。仲介会社も先に費用を受け取った以上は調査を怠れません。そのため、着手金のみならず先行投資したほうがM&Aの成立がしやすいという傾向はあります。
【3】高すぎる報酬体系にも注意が必要
しかしながら中には悪質な仲介会社も存在します。
手数料の中でも、特に着手金はM&Aが成立しなくても返金はありません。莫大な着手金を請求されたのにもかかわらず、紹介された買い手が赤字経営だった、というケースもあるでしょう。
仲介会社には買い手企業のリスクについて説明責任があります。この説明が不十分なうちに手数料を請求するような会社は避けた方が無難でしょう。
裏を返せば、着手金の妥当性が、良質な仲介会社を選ぶ基準になるということです。
5)M&Aの仲介会社選びのポイント

報酬体系は仲介会社によりタイプが異なり、手数料の相場は一概に言いづらいことがわかりました。では料金だけで仲介会社の良し悪しを計れないとなると、どのような側面で仲介会社を選べばよいのでしょうか。
実績や過去の成約件数
仲介会社には莫大な手数料を請求するだけの成果が求められます。
M&Aは、経営状態の調査、会計・税務、法律など、手続きのどれをとっても専門性が高く幅広い知識が必要です。そのため、各分野で有資格者である専門家がおかれているかどうかは最低限確認しましょう。
仲介会社には実績の開示義務がありますから、公式HP等で事前に確認しておけると良いでしょう。
得意分野と自社のニーズとのマッチング
仲介会社にはそれぞれの強みがあります。特定の業種を得意とする会社もあれば、会計事務所に太いパイプを持ち事務処理スピードが売りの会社もあります。
仲介会社を選ぶときは知名度や実績だけでなく自社の業種やニーズにマッチした会社を選ぶとよいでしょう。
コンサルタントとの相性
M&Aはスピード勝負といわれている世界です。条件の良い話は保留にしていると他社に流れてしまいますし、一度売り手が見つかると、矢継ぎ早に手続きが進んでいきます。
そのため、コンサルタントとの相性は相談時の早い段階で判断しなければなりません。
無理にでも成立させようとするのではなく、自社の意思を尊重し交渉に臨んでくれるかどうかということを念頭に置いて、相性が合うかどうか見極めましょう。
6)この記事のまとめ
M&Aの手数料と一口にいっても、その内訳は相談から成立に至るまで事細かに分かれています。
また報酬体系も、近年の仲介会社間の競争激化から相談料や着手金などを無料とする会社も多く見られ、手数料も一概にいくらと言いづらくなりました。
ではM&Aの手数料が妥当かどうかはどこで判断すれば良いのでしょうか。
それはやはり、自社の希望を叶えてくれるM&Aの成立に尽力してくれるかどうかです。
- 自社の規模、業界、意向に近しいM&A実績があるか
- 仲介だけでなく交渉まで行ってくれるか
- クライアントの意向を無視して無理に成立させていないか
上記のような点を念頭において相談に臨むことで納得感のある手数料により近づくでしょう。