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会社を身売する!社員や経営者はどうなる?

2人のビジネスマン

「身売り」はネガティブなイメージですが、例えば不採算事業の売却の場合、株価が上がるケースがありますし、社員の新たなキャリアの選択肢が広がるといったポジティブな側面もあります。ここでは経営者と社員両方の視点で会社の身売りについて解説します。

1)会社の売却方法

一言で会社の身売りと言ってもいろいろな方法があります。会社そのものを他社に譲渡するだけではありません。近年では企業買収や売却の事例が多くなり、その方法も体系化されてきました。ここでは代表的な方法について解説します。

【株式売却】

会社の全体を売却する方法です。これが最も一般的な方法であり、一般的に身売りと言えばこの方法を連想される方が多いと思います。

売却する株の割合が100%の場合

その会社の事業や財産の全ての売却です。ただし、100%ではないケースも多々あります。

51%の場合

株主総会の過半数を得ていますので、役員選任議案の決議が可能です。実質的にその会社を支配することができます。

33%の場合

これでも十分に会社に影響力を発揮できます。

身売り元の会社が将来その事業を復活させる可能性を残したまま身売りしたい場合、100%売却ではないケースをとることが多いです。こういった場合は、実質的に身売りはされていますが、前役員が残るケースもあります。

【事業、資産売却】

対象会社の一部の事業や資産のみを切り離して売却する方法で、株式売却が発生しないケースです。株式売却と異なり、会社自体の支配権は譲渡されません。身売り元としては経営権を維持したまま、任意の事業や資産だけを売却できるという非常に便利な方法である一方で、対象の線引きや価値算定が難しい方法です。

人は事業の最重要な要素ですから、対象事業にかかわる従業員も身売り先会社へ異動することになります。同様に対象会社の工場や設備、知的財産などをパッケージにして売却する方法が一般的です。この中には顧客網も含まれることがあり、顧客網は営業人員とセットでこそ価値を発揮しますので、事業売却と一緒に資産売却を組み合わされるケースが多いです。

2)身売りの目的

考えるビジネスマン

 身売りには当然目的があり、その目的を達成するための選択肢の一つとして身売りを行います。本当に身売りが選択肢として正しいのかという議論はありますが、ここでは身売り元の経営者の視点で、何を目的として身売りを行うのかについて解説していきます。

【事業承継】

 これは近年特に日本の中小企業に多いです。経営者が高齢化し、後継者がいない場合、その事業を引き継いでくれる人がいないわけですから、事業を継続させるために会社自体を引き継いで頂ける会社へ売却します。

安心できる大手企業に売却したいとお考えになる経営者が多いようですが、大手企業としても選別の目は厳しく、大手企業が持っていないようなユニークな技術や顧客網を持っていないと買収対象のテーブルに乗らないことになります。

【キャピタルゲイン】

 株式や事業を売却することで得られる資金を目的としたものです。その資金を使って新たな事業や保持している他の事業に費やすことが目的だったり、オーナーがリタイアするためのご褒美的な資金だったりします。

【不採算事業の切り離し】

複数の事業を展開している企業で、特定の事業だけ不採算で他の事業にも影響が出てきており、ここが重要ですが対象事業には他社にニーズがある技術や顧客網や人材や資産がある場合、不採算事業でも価値がついて売却できる場合が多々あります。

これは売り手としては不採算事業の売却でキャッシュを手にできますし、買い手としても比較的安価に欲しい部分だけ買収することができるため、Win-Winの取引となります。一方で買収後、必要な部分だけを残して事業は解体されるか、他の事業に吸収されるなどリストラの対象となることが多いです。

売却対象事業が不採算ではない場合

経営資源を別の事業に集中させたい場合、集中させたいと計画している事業以外の事業が身売りされることがあります。

【事業の拡大(シナジー効果)】

対象事業や会社には成長の余地があり、タイミング的に短期間で市場を取ってしまわないと機を逸してしまうが、今ある経営資源では成長に限界がある場合、事業の拡大を目的にして身売りされる場合があります。特にIT業界で見受けられます。

既に強い先行者がいる場合、対象会社の将来の頭打ち感が見えることがあります。こういった場合、先行の強者へ早めに身売りした方が、高い価値で売却できるため、成長途中や不採算ではない場合でも身売りされることがあります。

3)経営者にとってのデメリット

考え事をするビジネスマン

 身売りはここまで解説してきたような良いことばかりではありません。必ずデメリットが発生するわけではありませんが、大きなリスクとして捉える必要があります。ここでは身売りによって発生するデメリットについて解説していきます。

【育てた事業を失う喪失感】

 特にオーナー経営者の場合、育てた会社や事業は我が子も同然です。その事業や会社を手放すことになりますので、精神的な面での喪失感は否めないと思います。ただし、育てた我が子がさらに成長するための身売りであれば、ポジティブな選択になるのではないでしょうか。

【外部から「身売り」とネガティブに評価されることがある】

 「身売り」という表現はあまりポジティブな表現ではありません。事業が立ち行かなくなったので売却するというイメージが先行しがちです。ここまで解説してきたように、事業承継、キャピタルゲイン、シナジーを狙った事業拡大はネガティブな目的ではなく、むしろポジティブなものです。

身売りの目的については、関係者が最初ネガティブな印象を持つことを前提に、しっかりと説明する必要があります。

【身売り完了までに時間と費用を要してしまうリスク】

一般的に事業売却はスタートから完了まで数カ月を要します。場合によっては年単位になることも珍しくありません。身売りの実行には、売却先を探してくれる金融機関、ブローカー、フィナンシャルアドバイザー、リーガルアドバイザーそして従業員といった関係者が関わることになります。手続きがもたついてしまって長期間を要する場合、関係者の費やす時間も長時間になってしまいますので、費用も莫大なものとなってしまいます。

手続きがもたつく要因

①売却先が見つからない
②売却先との交渉に時間を要する
③社内合意に時間を要する
④上場している場合、東証との折衝に時間を要する
⑤先方のデューデリジェンスで何らかの問題が発見された場合の対応に時間を要する

4)身売り後、社員はどうなる?

考え事をするビジネスマン

 身売りにはどうしてもネガティブなイメージが付きまとうため、社員は身売りに敏感です。ここでは身売りの結果、社員にどのような影響があるのかについてポジティブな側面とネガティブな側面で分けて解説していきます。

【ポジティブ:雇用は担保される】

 身売りされたからといっても基本的に雇用は担保されます。日本の雇用法は非常に厳しいため、簡単には従業員を解雇できないためです。また身売り元の会社は従業員の雇用の確保、待遇の維持を契約条件に盛り込むことがほとんどです。また、基本的に事業は人に依存する要素が強いため、買収の目的自体が人の確保であることが多く、身売り時に人を減らすことはほとんどありません。

【ポジティブ:福利厚生が良くなることがある】

 中小企業が身売りをし、大企業に買収された場合、保険、給与テーブル、休みの取り方、研修制度、設備などが良くなることがあります。大企業のグループ会社の一員になると、相応の待遇を担保しなければ不公平が出るためです。元の中小企業では企業規模の観点から、福利厚生が充実していない会社も多く、この点で、大企業への身売りは大変なポジティブ要素になると思います。

【ポジティブ:キャリアのチャンスが広がることがある】

前述の福利厚生が良くなることがあることに類似していますが、大企業に身売りした場合、例えばグローバル展開している企業の場合、海外キャリアの道が開くことがあります。また、大企業の場合、さまざまな種類の事業を展開していますので、自分の力がより発揮できる事業への異動を申し出ることも可能です。

特に身売り直後には、買収先から「使える社員」の見極めが行われることが多く、ここで目に留まると抜擢人事の可能性もあります。例えば今まで仕事をしっかりやってきたのにどうしても評価が伴わなかった場合、評価システムが変わることがありますし、評価者も変わることがありますので、チャンスととらえることができます。

【ネガティブ:同僚が退職するリスク】

 身売りによって雇用は保障されても会社のさまざまな制度は変わります。これらの変化が起きると社員が退職しがちなのは自明です。あなたの仲の良かった同僚が退職してしまうリスクはあります。

【ネガティブ:買収先のルールに従う必要がある】

例えば大企業に買収された場合、買収先企業の人事制度、内部統制ルールそして企業文化の適用が図られます。これらの制度は企業それぞれ違いますので、必ずギャップに直面することになります。「今まではこうだったのに、新会社では認められない」など。

そして新会社のルールに従うことは必須なので、覚える手間や、時には理不尽さを感じることもあると思います。

【ネガティブ:ポジション替えのリスク】

前述のポジティブな側面に、抜擢人事の可能性の話をしましたが、逆もまた然りです。今までのポジションがそのまま維持されないケースもあります。これは新会社の組織階層の構造だったり、変化点における人事変更の結果だったりします。

5)この記事のまとめ

身売りは、方法、目的によって、それぞれで社員や経営者への影響も変わってきます。何を達成するためにどのような方法を選択するのか、経営者にとってのデメリットを考慮した上で選択する必要があります。

社員にとってはポジティブな側面もあります。変化点は大きなチャンスとなることもありますし、逆に自分の立場が危うくなることもあります。ただ基本的には身売り前の状況が継続されることが多いので、ネガティブに捉える必要はありません。

6)会社、身売りに関するQ&A

Q&A

【Q1】社員が目にする身売りの前兆とは?

 色々なケースがありますので、代表的なものを挙げると。①知らない人が社内見学に来る、②会社や事業業績が2期連続で赤字、③経理責任者が経営層に呼び出される機会が増える、④社長を見かける頻度が下がる、⑤リストラが行われる、などです。

【Q2】身売り後の退職金はどうなる?

 基本的に身売り前の人事制度で蓄積された権利は引き継がれます。例えば前の会社で蓄積した退職金は、その金額が新会社へ引き継がれます。一方で、新会社異動後の退職金加算の計算方法は、新会社の方針で変更になることがありますので、注意が必要です。

【Q3】競業避止条項とは?

 身売りを行う契約書の中に競業避止条項というものが一般的に入ってきます。これは身売り後の経営者もしくは会社が競合となる事業をやってはいけないというものです。当然経営者は対象事業のノウハウを持っていますので、身売り後にまた同様の事業を立ち上げるノウハウはあります。これでは買収先企業は意味がありませんので、防止する条項を入れます。ただし期限が限定されるケースが多いです。

【Q4】株価への影響はありますか?

 上場会社の場合、身売りは株価に大きな影響を与えます。株価に与える要素としては、身売りの目的、売却価格、身売り後のビジネスプラン(財務データ含む)が重要になります。一般的に事業売却や子会社売却はネガティブにとらえられますが、このような要素によってはプラスに捉えられ株価が上がるケースも多々あります。

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