未分類

M&Aの成功事例と失敗事例6選!そこから学べることとは

成功 失敗

近年、国内においても活発化しているM&A、大手企業だけでも毎月数十社が合併・吸収しています。それに中小企業を加えると実数は倍以上になるでしょう。M&Aには成功と失敗がつきものですが、今回はM&A事例の成功例と失敗例6例を検証してみます。

1)日本のM&A事例の牽引役は?

デスクとノート

日本におけるM&A事例は活況を呈しています。2017年こそ前年より取引額が低下しましたが、2018年の上半期は約2410億米ドルの取引額を記録しました。

これは、2017年の同期と比較して267,8%もの増加で、2018年の上半期だけで2015年、2016年の総取引額を上回っています。

【1】ヘルスケアと電気通信がシェアの半分

最新の日本のM&Aの買収・合併案件は、ヘルスケア部門と電気通信に集中しています。両者だけで全体の57,9%のシェアを占め、取引総額は1389億米ドルに到達しました。このツートップに続き、ハイテク産業、エネルギー電力分野そして不動産が続いています。

【2】増加するクロスボーダーM&A

また、日本のM&Aを活発化している理由としてクロスボーダーがあります、クロスボーダーとは国境を越えて締結するM&Aです。2018年には1000億円を超えるM&A事例が20件記録されていますが、国内企業同士のM&Aは伊藤忠商事がユニー・ファミリマートホールディングスを1200億円で買収した一件だけで残りの19件は海外と日本企業のクロスボーダーM&Aでした。

この中で最大のクロスボーダー事例は、武田薬品工業がアイルランドの製薬大手シャイアーを6,8兆円で子会社化したものです。

【3】日本の企業はM&Aに前向き?

どうして、日本の企業が海外M&Aに前向きなのか?それは国内市場が不況で海外市場にM&Aで活路を求める為です。日本の不況が継続し市場が縮小する限り、今後もクロスボーダーM&Aが市場を牽引する流れは変わらないでしょう。

世界のM&A市場でも、クロスボーダーは41%と2007年の44%に迫る勢いで特にアジアの新興国でのM&Aが増加中です。

2)M&Aの事例の前に、なぜM&Aが必要なのか?

ビジネスマン 説明

M&Aの事例には、必ず売り手と買い手がいます。では、売り手と買い手はどうしてM&Aをするのでしょうか?ここでは、知っているようで知らないM&Aの売り手と買い手のメリットを考えます。

【1】M&A買い手側のメリット

企業売買において買い手側はM&Aにどんなメリットを求めているのでしょうか?それは、規模の経済・範囲の経済・多角化経営の3点があります。それがすなわち売り手がM&Aに見出すメリットです。

ここでは買い手がM&Aに見出す3つのメリットを紹介します。

買い手の目的1:規模の経済

企業を買収したい側の目的には規模の経済があります。商品は大量に生産する事でコストを大幅に下げる事が出来ますから企業は次々に工場を建てますが、工場のコストで商品のコストが上っては元も子もありません。

そこで買い手は競争相手の同業他社を買収したり、競争エリア外の同業者を買い取ります。これなら工場を建てずに買収した企業が持つ生産性や販売エリアを獲得できるのです。

買い手側の目的2:範囲の経済

範囲の経済とは生産体制の集中を意味しています。バラバラの工場で商品を生産するより、ひとつの工場で幾つかの商品をまとめて生産する方がコストや無駄が抑えられ安く大量に商品を製造する事が出来るからです。

そこで、同業他社を買収して設備や資源を共有し買収した企業は自社に組み込み有機的に機能するように垂直統合を図ります。

買い手の目的3:経営の多角化

買い手は同業他社ではなく、全くジャンルが違う企業を買収する事もあります。新規参入目的で既存の会社を買収し、ノウハウを吸収、新規参入のコスト・時間・リスクを軽減するのです。また、自社のエリア外や海外への進出では土地の習慣やルールの壁、政府・行政の許認可問題が発生します。

しかし最初から現地の企業を買収すればコスト・時間・リスクを抑え短期間で人材やノウハウを得る事が出来ます。

【2】M&A売り手側のメリット

買い手がM&Aをするメリットは、規模の経済、範囲の経済、経営の多角化でした。逆に売り手のM&Aメリットには、カーブアウト、事業承継、会社の存続等があります。

ここでは売り手がM&A事例に見出す3つのメリットを紹介します。

売り手の目的1:カーブアウト

売り手企業の目的には、カーブアウトがあります。カーブアウトとは子会社や自社の事業の一部を切り離して新しい会社にしてしまう事です。

こうして切り離し独立させた会社をM&Aする事で新しい経営者や資本を導入し、所有する技術やノウハウを磨き、カーブアウトした子会社の潜在的なパワーを引き出します。

また、カーブアウトには赤字であったり、メインの事業ではない為コスト削減で事業や子会社を切り離す事もあります。こっちの方が社会派ドラマや映画などで私達にはお馴染みかも知れません。

カーブアウトで親会社は限られた資源を残った事業に集中して経営力を高め、切り離された子会社や事業は新しい資本と経営者を得て再生のチャンスを得ます。

売り手の目的2:事業の承継

売り手にとってのM&Aの目的の二つ目は事業を承継する後継者の問題です。会社を存続させたいが周辺に適当と思われる人材がいない時、会社は廃業するしかありません。そこで、M&Aをする事で自分の会社を引き継いでくれる人材を探すわけです。

もう一つ、親族がいても事業継承が難しい場合にもM&Aが使われます。会社を承継するには個人保証や相続税など財産だけではなく負債やリスクを背負いますから親族がいても受け継ぐとは限りません。

そのような場合には、M&Aをして第三者に会社を譲渡し会社を存続させるのです。

売り手の目的3:会社の存続

売り手のM&Aのメリットの三つ目は、経営不振や赤字が積み重なった場合です。中小企業の場合、資金力が弱いので優秀なノウハウや技術があっても融資が受けられずに経営が傾くケースがあります。このような場合にM&Aをする事により、資金力が豊富な企業から資金融資を受けられるかも知れません。

また、買い手の企業の傘下に加わる事が出来れば研究開発や特許技術を活かす事も出来て、財務状態の改善も見込めます。

3)M&A成功事例3選

階段を上るビジネスマン

ここまではM&A事例から売り手と買い手がM&Aに見出すメリットを解説しました。ここからは近年のM&A成功事例を3つ紹介してみます。成功するM&Aとはどういうものなのでしょうか?

成功事例1:味の素がトルコのキュクレ食品を買収

M&Aの最初の成功事例は、日本味の素株式会社がトルコにある2社の食品会社を買収し3つの会社を統合したケースです。

トルコ側の2社とは、トルコで液体調味料やピクルスなどの製造と販売を手掛けているキュクレ食品。もう一社は粉末調味料や粉末スープ・デザートなどの加工食品製造販売のオルゲン食品です。

一方、買収した味の素は、有名な味の素をはじめとする調味料以外にもインスタント食品・飲料・健康食品を製造販売する大企業です。味の素は35の国と地域に事業所を置き、従業員総数34452人、2018年の売上高は1兆1502億円です。

【1】味の素がトルコ進出したメリット

味の素がトルコに進出したM&A事例について見てみます。日本味の素は、どうして中東のトルコの食品会社をM&Aしたのでしょうか?

実はトルコは人口7563万人で一人当たりのGDP(国内総生産)が1万ドルを突破し政情不安の国が多い中東で東南アジア諸国より所得水準が高いのです。そこに目をつけて日系企業のトルコ進出も加速し、2012年の時点で158社が進出、日本政府もトルコとのEPA(経済連携協定)を目指しています。

また、所得水準の向上で食の多様化も進み、味の素のような異国の調味料も受け入れられる素地があるのです。

買収したキュクレ食品は、1915年創業の老舗メーカーで売上高は12億円ですが、トルコ全土で3万店の販売網を持ち周辺20か国に販売実績を持つ潜在力の高い企業です。

【2】トルコ、キュクレ食品のメリット

一方でキュクレ食品は老舗メーカーらしく伝統的な食事には対応できますが、食の多様化についてのノウハウがなく味の素の製品開発能力と世界35カ国に展開しているグローバル力に魅力を感じたと回答しています。

これは、味の素とキュクレ社の持ち味を生かす事が出来たM&Aの成功例と言えます。

【3】味の素のM&Aのポイント!

  • トルコの人口は7563万人と市場が比較的に大きい
  • 国民一人当たりのGDPが1万ドルを突破し成長著しい東南アジアより高い
  • 親日国であり治安も良いので日本企業も多数進出
  • 経済的な豊かさから食の多様化が進んでいて日本の調味料が受け入れられる素地がある
  • キュクレ食品は中小企業ながら老舗でトルコ全土に3万店の販売網を持ち海外販路も持つ

成功事例2:ロート製薬南アフリカの歯ブラシメーカーを買収!

M&Aの成功事例2つ目はロート製薬です。目薬でお馴染みのロート製薬は2016年7月1日南アフリカの歯ブラシメーカーAJNORTH社を完全子会社化しました。

AJNORTH社とは、1902年創業で売上高5億円の南アフリカ唯一の歯ブラシメーカーです。日本企業の進出というと、東南アジアでなければ欧州やアメリカになりそうなものですが、どうしてロート製薬は日本を遥かに離れた南アフリカの歯ブラシメーカーとM&Aを締結したのでしょう。

【1】ロート製薬が南アフリカに進出したメリット

ロート製薬のM&A事例、どうして日本から遠い南アフリカの歯ブラシメーカーを買収したのでしょう?

ロート製薬が完全子会社化したAJNORTH社は、日用品、化粧品、ブラシ製品などの製造販売業者です。NORTH社はパーソナルヘルス&ビューティーブランドを複数所有する老舗で他社製品のOEM(ライセンス販売)も引き受けています。

販売販路は、南アフリカを始めとするアフリカ中南部で主に大手スーパーチェーンを中心に展開します。

ロート製薬は1990年代から中国、ベトナム、インドネシア等のアジア市場を開拓していました。国が豊かになると生活に余裕が生まれ健康や衛生に気を配るからです。販売戦略は当たりロート製薬のアジア進出は成功、現在はアジア圏での売上が連結決算の3割を超える勢いに成長しました。

そんなロート製薬がアジアの次に目をつけたのが経済成長著しいアフリカで、すでに2013年にはケニアに現地法人を立ち上げタンザニア・エチオピアなどで製品販売を開始しています。

AJNORTH社との縁は、NORTH社が販売している妊娠線防止クリーム「HappyEvent」をベトナムのロート製薬現地法人がライセンス製造していた事でした。

そこでロート製薬は、東アフリカ・西アフリカへの事業展開からアフリカ南部へも展開する思惑でAJNORTH社を買収したのです。

【2】AJNORTH社のM&Aメリット

NORTH社は、アフリカ中南部の大手スーパーに自社製品を販売していますが、そこはロート製薬の販路でもあるので市場を共有できます。同時にNORTH社は妊娠線予防クリームなど海外でもOEMされるヒット商品があり、ロート製薬の販売ルートを使いアジア市場にまで販路を拡大できます。

【3】ロート製薬のM&Aのポイント!

  • 南アフリカは経済成長により国民が豊かになり保健衛生への関心が高まっている。
  • 東西アフリカに事業展開しているロート製薬は南アフリカに市場を持つAJNORTH社を買収する事で南アフリカに販路が開ける
  • 南アフリカの歯ブラシメーカーはNORTH社だけであり競争相手がなく販路拡大に有利。
  • NORTH社は妊娠線予防クリームなど海外でもOEM販売されるHIT商品を産みだすノウハウがある。
  • 逆にNORTH社はロート製薬の東西アフリカ・アジア市場を利用して事業を拡大できるチャンスが産まれる。

成功事例3:吉野家ホールディングス、ラーメン運営会社「せたが屋」を買収!

国内外で牛丼チェーン「吉野家」を運営する吉野家ホールディングス(以下HD)は2016年の6月27日醤油とんこつラーメン等で有名な「せたが屋」や「ひるおび」をチェーン展開する「せたが屋社」を連結子会社化しました。

この情報は少なからずネットメディアに衝撃を以て受け入れられます、それというのも吉野家HDは2007年に低価格ラーメン「びっくりラーメン」の事業を引き継いだものの低価格を維持できずに2009年に事業徹底しているからです。

【1】吉野家HDが、せたが屋社を買収したメリット

一度びっくりラーメンを買収してM&Aに失敗事例を残した吉野家HDはどうして再びラーメン事業に参入しようとしたのでしょうか?

吉野家HDが一度失敗したラーメン事業に再び挑む理由は、せたが屋社の経営者である前島氏の独創性です。前島氏は、既成概念にとらわれずに新しいラーメンのスタイルを次々に生み出す名物経営者で、ラーメンの食べ歩きの趣味が昂じて自分でもこだわりラーメンを作るようになり10年間の独学の後に2000年にラーメンせたが屋、2001年にひるがおをオープンしました。

2006年には、株式会社「せたが屋社」を設立し既成の枠にとらわれないアイデアでニューブランドを次々と産み出しています。翌2007年には、ニューヨーク進出を切っ掛けに米国とアジアを中心に海外に積極展開し、ニューヨークマガジンで「ベスト・オブ・ニューヨーク・レストラン・セクション」を受賞。世界のラーメンブームの先駆けになりMrラーメンと呼ばれる存在になります。

吉野家HDは、せたが屋社のポテンシャルもさることながら前島社長のMrラーメンとしての独創性に着目しオリジナルメニューや新しいアイデアを求める思惑でせたが屋社の株式の66%を買い取り連結子会社化したのです。

吉野家HDは超少子高齢化で縮小していく市場をにらみ、長期的なビジョンで競争から共創を掲げ、せたが屋社と資本提携し新たな価値産みだそうと考えています。

また、世界的にはマイナーな牛丼の世界進出には不安があり世界ブランド化しているラーメンを取り込む事で進出を容易にしたい思惑もあるようです。

【2】せたが屋社、前島社長のメリット

一方で、せたが屋社の吉野家HDとのM&Aメリットはどこにあるのでしょうか?

第一に、規模が大きくなり社員数も増えてきた会社を維持するだけでなく事業を大きくする為、資本提携相手として吉野家HDが必要だった事です。もう一つは、グローバル展開やガバナンス強化、豊富な資金を利用して労務改善し従業員満足度をあげる為です。

ブラック企業が問題になり、賃金を上げただけでは人が集まらないファストフード業界で労務改善は事業を拡大していく上で避けて通れません。せたが屋社は、今回吉野家HDと資本提携した事で、食材調達などにスケールメリットが出て背後に吉野家HDを背負う事で、これまで入社しなかった人材も集める事が出来ます。

元々、ラーメンを世界食にという夢を持つ前島氏は、吉野家HDの資金力を背景に、より強力に世界に打って出るようです。

【3】吉野家HD、せたが屋社のM&Aのメリット

  • 競争より共創の観点から、せたが屋社と業務提携する事でオンリー1の価値観を創出する。
  • 世界的には知名度が低い牛丼をネームバリューがある、せたが屋社のラーメンと連携して進出する事で受け入れやすくする
  • せたが屋社としては、吉野家HDの資金援助を受ける事で労務改善し従業員の意欲を高める
  • 吉野家HDの看板を背負う事で会社のガバナンスを強化、より強力に世界に打って出る

4)M&Aの失敗事例3選

失敗

ここでは、M&Aの失敗事例をいくつか見ていきたいと思います。最初から失敗したくてM&Aする企業はないので、どこかの時点でボタンの掛け違いが起きたわけです。

それを把握する事で、どうすれば失敗しないで済むかを考える事が出来ます。

失敗事例1:丸紅による米穀物大手ガビロンの買収!

2013年7月、日本の大手総合商社丸紅は米穀物大手のガビロン社が持つ2つの事業を持分譲渡契約で取得しました。

ガビロン社は、穀物や肥料、エネルギー仲介をする企業で2011年12月の売上高は連結で17,852,2百万米ドルです。一方の丸紅は食糧、繊維、紙パルプ、化学薬品資材などの輸出入企業で66の国と地域に130拠点を持つ大企業で売上高は連結で13兆9253億円です。

丸紅は中国市場における大豆輸出が首位で、そこに中国市場に影響力がある穀物大手ガビロン社を買収する事で規模の経済と範囲の経済の拡大を図ったのです。

しかし、中国向け大豆の輸出で首位だった丸紅が穀物大手のガビロン社を買収した事で大豆貿易の6割が集中する中国政府が危機感を持ちます。

共産党の一党独裁体制である中国では、党の方針で簡単に市場が統制されます、資本主義社会の政府とは根本が違うのです。中国政府は丸紅のガビロン社買収を認めますが、大豆の輸入と販売は独立して行う事を命じました。これにより、丸紅のガビロン社買収は無意味になり中国市場での利益が大幅に減少、結局ガビロン社のブランド費用500億円の滅損損失を計上。

さらに、2015年3月の連結決算では1200億円の減損損失を出しました。

【1】丸紅がガビロン社買収に失敗した理由

M&A事例としては成功していた丸紅によるガビロン社の買収はどうして中国政府の機嫌を損ねたのでしょう?丸紅の失敗は、中国のカントリーリスクを過小評価していた事でした。

※中国は世界で一番豚を飼育している国で4億3500万頭に上り2位のアメリカ7300万頭を大きく引き離しています。

著しい経済成長により中国では国民所得が上り、それまでの米や麦などのでんぷん中心の食生活から肉類、乳製品へ嗜好がシフトしていました。特に伝統食である豚肉の消費量が増加傾向にあり、ブタの飼料として大量の大豆油かすの需要が拡大し続けています。

その為中国では、大豆を輸入に頼っており食糧安全保障上の見地から丸紅の行動を大豆の寡占化を狙う敵対行為とみなしたのです。

本来なら丸紅は、ガビロン社買収の前に中国政府に対して大豆を寡占化して中国の経済に打撃を与えるつもりはないと説明すべきでした。これが資本主義市場なら資金力がある企業が市場シェアを占めようと問題ありませんが、中国は社会主義国です。

丸紅の行為は中国政府に対する敵対行為として捉えられ、ガビロン社は中国での事業が思うように運ばず事業価値を下げてしまったのです。

【2】丸紅のM&A失敗のポイント

  • 中国が大豆を輸入に頼っている事を軽視、大豆市場を寡占化しようとし中国政府の不信を煽った。
  • 社会主義と資本主義の違いをちゃんと確認しておらずカントリーリスクを回避できなかった。
  • 中国社会が豚肉に依存している構造で大豆が食糧供給の生命線である事への配慮が弱かった。

失敗事例2:LIXILのドイツグローエ社買収

日本の大手住宅建設リフォーム企業、LIXILは2015年の1月にドイツのグローエ社の株式を取得しました。取得株式は87,5%で買収により、LIXILはグローエ社とその子会社ジョウユウを関連会社とします。

ドイツのグローエ社は従業員9000人で水栓金具メーカーでは欧州随一の規模を持ち、同時に高い品質とデザイン性とブランド力で130を超える国で自社製品を販売していました。同じ建築関連企業であり、LIXILはグローエ買収で世界に市場を開拓できる筈でしたがこのM&Aは大失敗に終わります。

【1】LIXILがグローエ社買収で失敗した理由

高級水栓金具メーカーグローエ社を買収し世界進出を目指したLIXILはどうして失敗したのか?

この失敗M&A事例を見てみましょう。LIXILがM&Aに失敗した理由は、まったく初歩的なリスク管理の甘さにありました。買収によって、グローエ社と子会社のジョウユウを取り込んだLIXILですが問題は子会社ジョウユウにありました。

ジョウユウは中国国内に4000店舗の販売網を持つ中国最大の衛生陶器メーカーで、LIXILは販売戦略を高級部門と中級部門と廉価部門の3つに分け、高級部門をグローエ社、中級部門をLIXILと2013年に買収したアメリカン・スタンダード、廉価部門をジョウユウで担当する差別化戦略を考えていました。

しかし、落とし穴は廉価部門を担当するジョウユウにありました、ジョウユウの創業者一族が不正会計で巨額の負債を隠していたのです。

本来なら最初にジョウユウを買収したグローエ社がジョウユウの不正会計に気づく筈ですが、グローエ社は内部調査を怠っていました。次に、グローエ社買収に乗り出したLIXILとの間でM&A交渉が始まりますが、LIXILもジョウユウを厳しく調査せずグローエ社と共に買収してしまいます。

こうして全てが済んだ後、ジョウユウ社の不正会計が発覚、LIXILは簿外債務600億円という大損失を被るのです。本来ならば、デューデリジェンスで買収企業の財務内容を厳しく審査すべきをLIXILは日本的な性善説に立って軽視し失敗したのです。

【2】LIXILのM&Aの失敗ポイント

  • デューデリジェンスを軽視し不正会計をしていたジョウユウを見抜けなかった
  • 中国では経営TOP層に不正会計が多い事を事前に把握していなかった。
  • 日本人的な性善説に立ちすぎて海外企業を信用し過ぎた。
  • ジョウユウはLIXILから見ると孫会社にあたり調査が行き届かなかった。

失敗事例3:セブン&アイホールディングスのニッセン買収

2013年12月、セブン&アイHDの村田紀敏社長(当時)は株式会社ニッセンを子会社化し資本業務提携締結を発表し以下のようにコメントします。

『※ニッセンHDのカタログ販売やインターネット技術を高く評価しており当社グループのリアルな店舗という強みと融合する事で新たなシナジー効果が生まれると判断し提携した。』

コメントの通りセブン&アイHDは、当初大手の通販カタログ販売業者ニッセンの通販及びネット技術とセブン&アイHDで所有する実店舗と融合するオムニチャネルを活用し両社のシナジー効果で売上を伸ばす戦略を立てました。

ところがセブン&アイの思惑は大失敗し、ニッセンは期待したシナジー効果を出せず、2016年2月期においてセブン&アイの通信販売事業は84億5100万円の営業損失を出します。行き詰まりを感じたニッセンは、完全子会社化を条件にセブン&アイHDの財政及び事業支援を依頼し、2016年6月には完全子会社ニッセンHDになりました。

では、セブン&アイHDがニッセンとのM&Aで期待した店舗と通販の融合というシナジー効果はどうして失敗したのでしょうか?

【1】セブン&アイ、ニッセン買収の失敗要因

セブン&アイHDが通信カタログ販売の雄、ニッセンの買収でつまづいた理由は何でしょう?

ニッセンは従来、衣料品や家具などでお手頃価格を打ち出して実店舗に対する優位性を保つという典型的な総合通販のビジネスモデルを展開していました。実店舗を持たないからこそ、その分店舗維持費や人件費をカットし価格を安く抑えられるという仕組みが有効だったのです。

ところが、SPA(製造小売業)の発展がニッセンの優位性を失わせました、SPAは衣料の販売から製造開発までを単一業者が行うモデルであり安価で流行を取り入れた商品を市場に随時投入できるメリットを活かして事業を拡大していました。

ネット販売の浸透により、消費者は気候に合わせて必要な衣料品を買うように志向がシフトしカタログ通販では季節遅れになります。

一方でSPAはネット販売と販売製造開発を一貫して行うスピード感で消費者の支持を集めていきました。すでにニッセンのカタログ販売は時代遅れでしたが、このモデルを捨て去る勇気はニッセンにはなく、カタログを薄くして印刷回数を増やします。

しかし、品揃え不足やカタログ期間の重複、閑散期の盆休みにカタログを発行するなど失敗が続きました。これに原油価格の高騰が追い打ちをかけ、通販カタログ出版にかかる固定費も増加、2016年には無料カタログを廃止し有料カタログにシフトします。

このように本業のカタログ通販が低迷する状態では、セブン&アイHDの実店舗とカタログ通販のオムニチャネルなど実現できる筈もなく

セブン&アイHDが期待したシナジー効果は全く発揮できないまま完全子会社化への道を歩むのです。

【2】セブン&アイのM&Aの失敗ポイント

  • カタログ通販がネット通販のスピード感に勝てず変化する顧客のニーズを掴めなかった。
  • ニッセンは古いビジネスモデルになったカタログ通販を捨てられず弥縫策を繰り返し経営を悪化させた。
  • セブン&アイHDはニッセンの経営に対する介入が遅れ赤字を増やす事になった。
  • ニッセンに当初期待された通販と実店舗のオムニチャネルを活かす効果的な戦略が無かった

4)M&Aの事例成功と失敗事例の共通ポイント

成功と失敗

M&Aの成功事例と失敗の事例を国内海外のケースから6つ紹介してみました。ここでは、それぞれの成功と失敗に共通するポイントを分析してみます。

【1】M&A成功事例のポイント

  • M&Aをする戦略目標(規模・範囲の経済、経営の多角化)等を明確にしている
  • M&A先の案件情報を積極的に収集する。
  • シナジー効果を正しく見定める
  • 買収する企業のオーナーの熱意を汲み取っている

【2】M&A成功事例から得られる教訓

M&A成功事例からは以下のような教訓を見出せます。

M&Aをする戦略目標としては、味の素が買収したトルコのキュクレ社の案件が成功しています。味の素は規模と範囲の経済の拡大を求め、国民の所得が増えて食文化が多様になってきたトルコに進出。トルコには、トルコ全域に販売網を持つキュクレ社がいて、同じく味の素のグローバル力を求めていました。

これは簡単に見つかるM&A案件ではなく、味の素の現地情報収集の熱心さの成果とも言えます。ロート製薬が南アフリカ唯一の歯ブラシメーカーAJNORTH社を買収したのも、M&A先の案件情報を積極的に収集した結果です。

南アフリカが経済成長で国民が衛生と健康に気を配るようになった事、それを担う会社がNORTH社だけだった為にNORTH社を買収するだけで南アフリカからアフリカ中部にいたる大規模な販売経路を獲得できたのです。

シナジー効果を正しく見定める点と買収する企業のオーナーの熱意を汲み取る点で成功したのは吉野家HDによるラーメン屋せたが屋社の買収です。

せたが屋社の社長、前島氏の独創的なアイデアを業務提携という形で汲み取り、吸収するのではなく共創という概念でお互いが伸びるM&Aを提案し成功しました。

また海外では知名度が低い牛丼を世界食に成長したラーメンとコラボさせる事で世界進出しようとするのは大きなシナジー効果です。

【3】M&A失敗事例のポイント

  • デューデリジェンスが不徹底である
  • カントリーリスクを軽視したM&A
  • シナジー効果を読み誤っている
  • 経営責任が明確になっていない

【4】M&A失敗事例から得られる教訓

デューデリジェンスの不徹底は、買収先の企業の財務や法令の遵守状況の調査ですが、その不徹底で失敗したのはLIXILです。こちらのM&A事例では直接の買収先であるグローエ社には問題がないものの、グローエ社の子会社ジョウユウに不正会計がありLIXILは600億円もの簿外債務を負う羽目になります。

これは性善説で買収先を信じてしまう日本企業に多いM&A失敗事例です。

丸紅による米ガビロン社の買収失敗は、中国経済のアキレス腱である大豆輸入を丸紅が寡占するのではないかという中国政府の警戒感から発生しました。社会主義体制である中国では、共産党政府が簡単に市場に介入できるのでカントリーリスクには過敏になるべきです。

セブン&アイHDのニッセン買収の失敗は、当初、セブンが考えていたニッセンのシナジー効果を完全に読み誤っていた点にあります。資本提携の段階から、ニッセンの通販カタログ販売は、SPAによるインターネットを活用した直売モデルに負けはじめていました。

また、セブンはニッセンを子会社化したものの、経営については完全子会社化が出来るまではタッチせず、赤字が膨らみニッセンがお荷物になる原因になります。

これは買収時の経営責任の明確化を怠った結果と言えるでしょう。

5)M&Aの事例に関するQ&A

Q&A

以上、M&Aの成功と失敗について解説してみました。ここでは、上記に挙げたM&A事例以外の疑問についてQ&Aを見て見ます。

【Q1】M&Aで買収する会社に不正がある事が分かった時、救済措置はあるの?

株式譲渡契約書等のM&Aに関する契約書には、一般に表明保証条項が規定されます。これは契約当事者が契約当事者、又は対象会社もしくはその事業に関する過去、現在または将来の事実について真実である事を表明し、表明した内容を保証するものです。

これで相手方に表明保証違反があった場合には、他方の当事者は株式譲渡契約を解除できます。同時に表明保証違反に起因する事で損害を被ると、その損害について賠償を求める約束がされるのが表明保証条項では一般的です。

また表明保証保険という保険もあり、買い手側が保険契約者となる「買主用表明保証保険」と売り手側が保険契約者となる「売主表明保証保険」があります。

【Q2】クロスボーダーM&Aでよく起こる問題は?

クロスボーダーM&Aでよく耳にするトラブルは書面上では問題なくM&Aが成立するのに実際にM&Aが実行されると給与・勤務・リストラの問題で多くの不満が噴出する事です。日本側としては書面で懇切丁寧に説明しているのに、突如として大騒ぎになるのでM&Aの苦労が水の泡になる場合もあります。

これは、海外企業では書面をよく読まない人が多いという事実を日本側が認識していない為に起きるトラブルです。海外M&Aにおいては、書面を交付して終わりではなく社内説明会で口頭でハッキリ給与、雇用、リストラ問題を確認する必要があります。

また日本企業は会議が好きで、細かい過程まで本部や経営陣への報告を求めますが、海外企業はそうではなく細い報告を求めると反発を受ける事もあります。

【Q3】海外企業とM&Aをするメリットってなに?

クロスボーダーM&Aは日本では想像もつかないトラブルに見舞われるリスクもあります。しかし、海外には、これから豊かになる新興国が多く上手にM&A出来れば日本市場の数倍の収益も可能です。また、以前ほどでなくとも、海外の新興国は人件費や原材料費が国内より安く製造コストを下げられるメリットもあります。

それに海外企業を誘致している国では税率で優遇を受けたり、競争相手が少ない市場もあるので市場を寡占化し莫大な利益を挙げる可能性もあります。

最近では文化の違う海外企業で誕生した製品が日本で評判になり逆輸入で稼げるケースも発生していて、ベトナムで事業展開するエースコックは、ベトナム人が年間50億食も食べる国民食フォーに目をつけ、即席麺にして29億食を売り上げ近年日本へ逆輸入しています。

6)M&Aの成功事例と失敗事例6選のまとめ

M&Aの成功事例と失敗事例を比較対象してみました。

そこから分かった事をまとめると

  • 成功するM&Aには、規模の経済、範囲の経済、経営の多角化、シナジー効果など明確な戦略がある。
  • 失敗するM&Aには、デューデリジェンスの失敗による簿外債務の発覚、カントリーリスクの軽視、シナジー効果の読み違いがある。
  • 経営責任が明確にならないままM&Aすると、赤字でも親会社が経営に介入できず負債が増加するリスクが高まる。
  • 海外企業とのM&Aでは情報収集の熱心さが買収の成功と失敗を分ける場合がある。

このような結論になります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です